以前、ジュエリー ディスプレイに関する本を翻訳させていただいた。この分野の門外漢であった私にとって、それは新しい知識を多く吸収できる新鮮な経験であった。
新しく知った用語に『ビジュアル マーチャンダイジング』(VM)があった。これを一口に云えば、「目に訴求して、顧客の注意を引き、商品を売る」と云うことになろう。
VMをしっかり理解しようと、その後種々の本を読んだが、一般にVMの研究家は、ディスプレイとVMをそれぞれ定義付け、使い分けている事を知った。例えば、ディスプレイとは陳列そのものを意味し、VMは、戦略的な意図をもって商品を陳列する技術といった調子。しかし、商品を並べる際には、どのように並べれば、より商品が売れるようになるかと工夫をする事が当たり前で、わざわざVMなどという当時の私にとって耳慣れない用語を使う理由は、言葉の遊び以上の意味を感じなかった。
用語はともかく、原石であれジュエリーであれ、陳列方法が売上げに影響する事は事実だろう。私はIT事業者だが、以前宝石学の講師をしていた事、また顧客にジュエリー関連企業が多い事もあり、少数の店のコンサルタントをしている。ある店では「テーマウィンド」※を設置することとし、ディスプレイ用の什器を設計し(私の欲しい什器が存在しないことにまず驚き、結局特注せざるを得なかった)、年に15回季節に合わせたディスプレイを施している。スタート以来およそ3年契約が切れることが無いのは、ささやかながら効果が出ている左証かとも思う。ディスプレイが具体的にどの程度売り上げに結びつくかを測定することは困難であるが、顧客の足を一時でも立ち止まらせ、また、販売員が話しかけるきっかけを提供できれば、テーマウィンドの目的は果たせているものと考えている。
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