宝石の知識を活かして起業
ジュエリー起業家インタビュー
今回は、リスクを恐れずジュエリーの知識を活かして起業した河村 明範(かわむら あきのり)さんにジェムランド代表の福本がインタビューを実施した。河村さんはメレダイヤモンド・ダイヤモンドジュエリー買取専門店、MELEE(メレー)というホームページを開設し、ビジネスの中核としている。
電通総研(若者問題研究所「電通ワカモン」)が2010年暮れに発表をした高校生を対象とした将来の職業希望では、公務員が20%でトップ、二位は大企業で19%だった。この調査結果に対しては「日本の若者はリスクを嫌い安定を望む志向が伺える。北米の若者は起業家を目指す割合がもっと高く、チャレンジ精神に富んでいるから是。」といった論評を多く目にした。
私が思うに、出来る事なら自らの才覚で起業して自由な人生を切り開いていきたいと、少なくとも潜在的には考えている若者は日本でも多いのではないか。それにも関わらず前述のような調査結果なのは、自分のやりたい事や起業の方法が分からない、あるいは失敗が怖いといった不安があるからリスクを伴う選択ができないのだと思う。
そう、 起業にはリスク、そして困難もある。困難のひとつを例示すれば資金調達だ。銀行に事業計画や人物を見極める力がないから、創業前後の事業への融資実行判断は信用保証協会(いわば政府補償)もしくは担保にべったりと依存していて、資力が無い、であるからこそ融資が欲しい創業時に困難を覚える人は多いだろう。
カナダで私の会社が融資を受けた際には事業計画にこそ融資実行可否の重きが置かれていると実感し、国内で融資を受ける際との違いにビックリした記憶がある。カナダでの借入金に対する金利は日本国内と比べて総じて高いから、日本の銀行と異なりハイリスク・ハイリターンというスタンスだと一言でいう事もできるが、私としては国の経済を支える銀行家としての自負と責任としての融資判断であるといいたい。政府補償を得ての融資では無いからどうしても生じるリスク・カバーとして高めの金利なのだと。
日本の銀行は恐らく「銀行にハイリスクという発想など、とんでもない」というスタンスなのだろうと思う。それはそれでひとつの見識だ。しかし一方で、そのような立ち位置には銀行が産業を育てて国に資するといった発想は感じられず、自らの融資判断能力の無さを糊塗(こと)しているとも見える。
銀行がこのようなスタンスなのだから、北米の若者は起業家の割合が高いから良く、日本の若者は安全志向だから覇気がないといった識者の意見は、実際そのような側面を完全に否定できないにせよ、正鵠(せいこく)を得ているとは言い難い。識者たるもの中小企業への融資が政府補償に依存している金融機関の姿勢にこそ踏み込んでの見識を披瀝(ひれき)してもらいたいものだ。
ジュエリー業界での起業家を紹介するはずが蛇足が過ぎた。
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