X線とダイアモンド - アメリカの空港で裸を見られてしまう?
病院でお馴染みのX線はダイヤモンド業界でも利用されている。例を3つ挙げると次のような利用法がある。
1)ダイアモンド鉱山での選鉱
- この場合の選鉱とは、ダイアモンドとそれ以外の鉱物をより分ける事。ダイアモンドはX線を照射すると光る性質があるので、これを利用して選鉱に役立てている。
- ベルトコンベアの上に採掘した鉱石を流し、X線を当てる。光ったものだけを「シュ」と空気で吹き飛ばすという選考方法がある。
2)ダイアモンドに混ざった偽物を見分ける
- ダイアモンド ディーラーである知人のオフィスにいくと直径40cm程にまとめられたダイアモンドの山がいくつもあり壮観な眺めだが、彼の会社にはX線の装置がおいてある。前述のX線に対する ダイアモンドの蛍光を利用して、その装置にたくさんのダイアモンドをまとめて入れてX線を照射し、光らないものを分けるというよ うに、鑑別に利用している。
3)ダイアモンド鉱山で、鉱夫による盗難を防ぐ
- 価値が高いけれど小さくて隠しやすい宝石は、その鉱山で働く鉱夫によって盗まれるといった事が後を絶たないようだ。 宝石の中でも特に価値の高いダイアモンドの場合、数千万円もするX線を利用した身体検査装置を導入し、盗難を防いでいる鉱山もある。
- 蛇足ながらこの種の盗難のことを英語で“high grading”という。ただ鉱山用語でハイ グレードといえば“高品位”、つまり単位粗鉱(ダイアモンドなどと、それ以外の不要なものを完全に分けていない採掘物)当たりの有用鉱物の量や品質が高いということをも意味する。つまり盗難率と品位という、鉱山経営者から見ればいわば相反する性質のものを同じ熟語で表していることがなにやら言葉遊びのようで面白い。
- さて、同時多発テロ以後のアメリカでは様々なテロ対策を打ち出しており宝飾業界にも様々な影響がでているが、話にとりとめが無くなるのでここでは述べない。
- 今回述べるのは、前述の(3)で紹介したX線利用の身体検査装置についてである。ニュージャージー州にあるエッグハーバー タウンシップという町にある空港がこの装置を実験的に導入されたところ、狙い通り武器などを隠し持っていた場合たちどころに見つけることが出来るという試験結果であったが、問題は見えすぎることにあった。 なんと裸に成ったように体の隅々までが衣服越しに検査官に見えてしまったのである。CNNオンラインに写真が掲載されている。
- http://www.cnn.com/2003/TECH/ptech/06/26/seethru.security.ap/
本稿は、宝石学の世界Vol.166より引用した
Posted :2003/07/03
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