通常のマーケットを流通するルビー、サファイアは、そのほとんどが熱処理を経ています。宝石が熱処理を経たか否かは、簡単に分かる石もあり、また分からない石もあります。
確実な判断方法は、拡大検査によって、熱処理を受けた痕跡の有無を調べることです。
熱処理を受けた痕跡としては、例えば熱によってドーナツ状に変型した内包結晶(写真上)や、白濁しレリーフの高くなったフィンガープリント(写真上)、あるいはディスコイド フラクチャー(写真下)と呼ばれるインクルージョンを挙げることが出来ます。
ディスコイド フラクチャーは母結晶である宝石と、その宝石の中にある、他の鉱物の小さな結晶(内包結晶)の熱に対する膨張率が異なった結果生じたものです。暖められ、膨張した内包結晶よりも、母結晶の膨張率が小さければ、行き場を失った内包結晶は、母結晶の結晶学的に弱い方向に沿って破裂し、写真のような状態となって観察されます。
熱処理の有無を判断する簡単な方法と云うのは、あいにくありません。少なくとも、熱処理を経た場合に生じるインクルージョンに関する知識と、ルーペや顕微鏡を用いてそれを探せるテクニックが必要です。
拡大検査以外に、僅かなヒントを与えてくれる検査として蛍光検査があります。また鉄による吸収の強さ等を調べる高度分光計による検査も有効です。しかし、これらは専門の鑑別機関にのみ所持している機器ですし、正確さにおいて拡大検査に勝るものではありません。
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