トライゴン
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- 私は以前、先端恐怖症だった。尖った鉛筆の先からテレビに映るエッフェル塔の先端、はては女の子の付けマツゲまで、とにかく尖ったものが目に入ってくると、もうとっても怖くなってしまって思わず目をギュッとつぶってしまうという有様。キッスなど試みようものなら、どっちが女の子か分からないからダラシガナイ。 今はいつの間にやら直ったけれど、とにかくそんな恐怖症に悩まされていたとき宝石学を勉強しようと学校に入った。
- ところが入学してみると、朝から初めて手にする双眼顕微鏡に目をくっつけて、小さな小さなダイアモンドをピンセットに摘み、ニードルプローブなどと呼ぶ、聞くにも恐ろしげな千枚通しの様なもので石を突っつき回さなくてはならない羽目になってしまった。顕微鏡で拡大された針の先端がいやでも目に飛び込んでくるから、5秒と見ていられない。入学初日に退学届けを書くに至ったけれど、学費がもったいないから唇を固く固くカミシメながら、何とかその日その日をしのいでいた。さてそんなある日、ダイアモンドに可愛らしい三角形のマークがいくつも並んでいるのが見えた。大小の三角形(大きいといってもひとつ1mmもなかったけれど)が無作為に、しかし美しく配列している。陰影があるところを見ると立体らしい。照明を切り替え、石の角度を変えたりと、先端恐怖症もいつしか忘れて夢中になって観察した。
- その三角形が今回取りあげた「トライゴン」。大抵のダイアモンド原石の、八面体結晶面{111}から観察できる。先だって肉眼でも見える程のトライゴンがある原石を手に入れたので、撮影してみた。
- ←トライゴン(反射照明にて撮影)
(Posted:01/12/27)
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