真珠と珊瑚の穴につづいて、穴が一杯のふるいの話です。
●ふるいの穴と真珠の大きさ
真円(真球)真珠の大きさは直径のミリメートルで表すのが習慣です。取引には通常0.5mmごとの単位が使われています。
この大きさを測るのがダイヤモンドの大きさを測るシーブと同じような、「ふるい」です。ふるいは、円筒の底板を取り替えることで種々の大きさを測ることができます。
取引には0.5mmごとの大きさを用いますが、ふるいの穴は、精密なものは8分の1mmごとに意されています。(下記表参照)
この穴が精確でなければ、真珠の大きさも不正確になります。つまり取引価格に大きな影響を与えます。
穴の直径が精確であるかどうかは、ふるいのメーカーの技術です。現在の金型はコンピュータを用いて、100分の1mmの精度で作ることも可能です。一昔前に比べれば、雲泥の差です。でも、メーカーはそれぞれの穴径の金型を揃えなければならないのですから、コストも管理も大変です。一個の金型が狂って底板が不精確であれば、ふるいの製品はセットできないのですから。
●ふるいで落とす真珠
例えば、中珠の真珠のロットがあるとします。まず、8mmの板でふるい落としてみます。全て落ちたら、次は7.5mmの板でふるいをかけます。
その時、ふるいに残った珠は、7.5mm以上8.00未満の珠ですが、上の単位は普通略し7.5mmの規格の珠となります。
次に、7mmの板でふるいます。その時ふるいに残った珠は、7mm以上7.5mm未満の珠で7mmと呼びます。落ちた珠は7mm下となり、同様の作業を繰返します。
ふるい作業は、スリーブ内に多すぎない程度の珠を入れて、ふるいを数回回転させたり横に振ります。そのあと、スリーブの横を軽く2〜3度叩いて終わります。
ここで問題があります。真円真珠とはいえ、完全な真円というのはきわめてまれで、微妙な形状の真珠は1回のふるい作業より2回の作業、あるいは3回の作業で落ちていくことが多くあります。つまり、回数を重ねるほど、また振るう回数を増やすほど真珠はふるいから落ちていきます。
たしかにその方が精確といえますが、大きさが下がればモンメあたりの単価がさがるのが通常の取引習慣ですから、ふるいから落ちれば落ちるほど1個当たりの価格も下がっていきます。
売る立場にたてば、ふるい作業は1回で済ませたいものです。買う立場になれば、ふるい作業は多ければ多いほど価格的には安く取引できます。
●バロックの大きさ
真円真珠でも前記のような問題がおきます。これがセミバロック、バロックと変形度が進んでいくと、ふるいの仕方によってますますその傾向が顕著です。
極端にいえば、短径が8mm、長径が9mmのセミバロックの場合、ふるいの回数を増やせば、偶然縦になって8mmのふるいで落ちるかもしれません。
このセミバロックの大きさは、8mmとも8.5mmとも9mmともいえます。
おおきなバロックは、短径×長径で表しますから、このような問題はないかもしれません。
●ふるいの回数
このように、ふるいの方法によって大きさが変わってくるという問題に真珠業界の人たちも気がついています。
そこで、業者が集まって相談しました。いろいろ議論を重ねた結果、ふるい作業の回数とか横に振るう数とかの標準を定めました。その回数など筆者の記憶が定かでありませんので、ここでは記すことはできませんが、この取り決めも徹底して守られることがなく、今ではあやふやになっているようです。
筆者は真珠業界の人間ではありませんが、このような取り決め(規格)は、必要だと思います。いつか、また規格として制定しなおされることがいいなと願っています。
●ふるいの穴径の段階
ふるいの穴は、最小が2mmです。10mmまでは、メーカーによって、1/8、1/4、1/2mmのステップ単位の底板があります。
10mmから20mmまでは、1/4、1/2mm単位、それ以上は1/2mm単位が標準です。でも、これが規格として決められているものではなく、業界及びメーカーの標準であり、もっと細かく作ることも不可というわけではありません。
●ダイヤモンドシーブの穴
真珠のふるいと同じ機能のツールがシーブです。
真珠以上に小さな穴がたくさんあり、ラウンドブリリアントカットなど、円形のカットやボールを大きさで区分します。
通常市販のシーブは、最小の穴は0.9mmです。この大きさは、ラウンドブリリアンカットのダイヤモンドの1/200 の大きさに相当します。
穴は1.6mmまでは、0.05mm のステップで板が用意され、1.6mm からは0.1mm のステップで底板があり、市販品の最大は3.7mm がありますが、もちろんそれが限度というものではありません。
ダイヤモンドシーブの穴径は、つまり真珠用と桁違いのステップとなりますね。
●シーブでのふるい方
ダイヤモンドのメレの価格は、サイズが変わっても価格が大きく変わることはありませんので、真珠のようにふるい方については神経質になっていません。
でも、メレダイヤモンドをびっしり敷き詰めるパベ留めや、サイズをきっちり揃えなければ留められないレール留めの場合、職人さんはメレの大きさをシーブを用いてロットの中から厳密に選び出します。(もっとも大きさだけでなく、ガードルの厚さやクラウン部の高さも揃っていなければなりません。)
0.5mmの誤差も石留め全体の華麗さにとっては重要な要素なのです。
●ダイヤモンドシーブの一覧表を参考に示します。
雑学や T.Kawasaki
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