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■宝石学の世界□□★□□
□□□□□□□□□□□□………………………………………………Vol.258-20060418
ご購読ありがとうございます。1ヶ月程ゴールデンウィーク休刊とさせて頂きます。
次号は5月中旬以後の発行予定です。
▼ INDEX ………………………………………………………………………………………
1. Reders Exchange - パライバ トルマリン -
2. 宝石学 Q&A - モスオパールとモスアゲートの違いについて -
3. ジュエリーニュース - GIA JAPAN宝石図書が1〜7割引となるブックフェア開催 -
4. ジュエリーニュース - 真珠科学研究所第19期アカデミーコース受講生募集開始
5. ジュエリーニュース - ビルマ産と提示されるルビーが産地偽装の例が急増
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1. Reders Exchange - パライバ トルマリン - ∽∽∝∽∝∽∝∽∽∝∽∝∽∽∝∝
パライバトルマリンに関して皆さまからお寄せ頂いたご意見を3件紹介します。
▼関連:[前号]及び[JJA、パライバ トルマリンの定義を決議]
1件目ここから−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
From ゴンスケ さん
日本人は肩書きや形式に強いこだわりを見せる人種だと言われておりますが、それが
宝石市場にもこのようなゆがんだ価値観をもたらしてしまったようです。
権威のある宝石鑑別機関がパライバ・パパラチア・非加熱ルビーと表記した鑑別書が
あればその石は実際の価値に見合わない高価格で販売できるのが日本の宝石市場の現
状のようで少々理不尽な気がします。
特に加熱石か非加熱石かの鑑別は「全宝協」など最高の鑑別機関の技術を以ってして
も確証性のある結果が出せないのが現状のようなので、そんなことにこだわるよりも
石そのものの美しさを楽しめばいいのでは私は思います。
特にルビーやパライバなどの石は多色性の顕著な石ですので色々な光源のもとでその
色の神秘的な変化を堪能したりすれば、上記のようなつまらないこだわりはなくなる
はずだと思います。
ところで、パライバという石はアフリカ大陸生成の歴史を物語っているということを
ある本で知りました。パライバトルマリンはトルマリンの中に酸化銅とクロムが内包
されて出来た宝石ですが、その生成が行われたのは今から5,6億年前のようです。
その頃今のアフリカ大陸は南米大陸とひとつになっていたのですがそれが地殻運動か
何かで分離され今の位置に移動したということです。ナイジェリアでも「パライバ」
が産出されるのはそのためかもしれません。
パライバは最も現代的で宝石業界では歴史の浅い石ですが地学的には気の遠くなるよ
うな時を経て生成された石であることを知るに至り非常に私は感動しました。
そんな石をつまらない鑑別書で評価するのは馬鹿げているし自然の神秘に対する冒涜
だと思います。
2件目ここから−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
From KURO さん
福本さんの「パライバと呼ぶのはおこがましいような色の弱い石もパライバと名乗り
それが正しいという風になりそうで、心配です。」という意見に全く同感です。
2〜3年前に私の友人がパライバトルマリンの指輪を買ったのですが、その色はとても
衝撃的でした。
自然物なのに人工物のような蛍光ブルーに、目が離せなかったことを覚えています。
その後、パライバの名を聞くと友人の指輪を思い出すのですが、出てくるのは発色の
悪いものばかりです。
私の中では蛍光ブルーのもの以外はパライバではない、と、勝手に定義してしまって
います。
今後JJAの定義改正にともない、パライバの名前を聞く頻度は増えそうですが、その度
に落胆しそうで少し悲しいです。
3件目ここから−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
From のぞみ さん
メルマガのパライバトルマリンの定義についてですが、同じような意見です。
アフリカ産のパライバっぽい色のトルマリンと、それをどう呼ぶかについては私も気
になっているところでした。今年の2月にTucson(ツーソンのジェムショー)へ行って
アフリカ産の物を見ましたが、いわゆるパライバとは到底思えない代物で、あのネオン
カラーではありませんでした。もちろん、その産地の最高品質のものは、かつてパライバ
から産出されていた美しいネオンカラーなのかもしれませんが。
ところが、私が日本人とわかると「日本の市場ではパライバと言えば高く売れる」
と、法外な値段で売りつけようとするのです。日本の売り手も買い手もなめられた
ものだと思いました。
またこのような石が入ってきた時に日本の市場では「パライバ」「パライバカラー」
あるいは「パライバタイプ」等、パライバの冠を被せて売ってしまうだろうとも予想
しました。
モゴクのルビー、カシミールのサファイア、ムゾーのエメラルド・・・
産地証明が取れたとしても、美しくなければ意味がありません。
先日行われた某ジュエリーフェアで、産地証明のついた「パライバトルマリン」
なるものが大変な金額で展示されていましたが、色はインディゴです。
それをパライバと呼ぶのもどうかと思いました。
鑑定書、鑑別書、産地証明、産地名。それが無いと売れない市場。
本来宝石とは、鉱物のうち、耐久性と『比類なき美しさ』を持ったものであったはず
です。 屑石(失礼な言い方ですが)にもっともらしい名前をつけて売り、買う方も
そういうものだと思い込んでいる現状・・・磨くべきは己の審美眼ですね。
G.G.を取得して6年目、買う側の思い込みをなくしてもらい、宝石のもっと美しい所
もっと面白いところを楽しんでもらうべく、努力中です。
ご投稿ここまで−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
皆さま、貴重なご意見をありがとうございました。
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2. 宝石学 Q&A - モスオパールとモスアゲートの違いについて - ∽∽∽∽∝∽∝
Q: へちままる さん
最近オークションサイトでモス オパールと呼ばれている宝石をちらほら見かけるの
ですが、出品写真などからはモスアゲートと見分けがつきません。
また、モスオパールとして購入した宝石を知人から見せてもらったところ、ますます
わからなくなってしまいました。
手持ちの本にはどちらの宝石も詳しく書かれておらず、インターネット上の写真も
そっくりで、混乱しています。
モスオパールとモスアゲートにはどのような違いがあるのでしょうか? また見分け
方などありましたら教えてください。
A:
モス アゲートは、モスが苔を意味することからも明らかなように、苔のように見え
る緑または黒(稀に茶色)のインクルージョンを内包したカルセドニーの事です。
“苔”の正体は各種(マンガンなど)の酸化物です。
モスオパールは遊色効果を示さないオパール(コモンオパール)に、苔状のインクル
ージョンが内包されたものです。“苔”の原因はカルセドニーと同様だと考えます。
“モス”という共通の言葉が用いられているとはいえ、カルセドニーとオパールは別
種の鉱物ですから、その特性の違いによって識別をすることができます(写真を見比
べても両者を識別することは通常できません)。
異なる特性のひとつが屈折率です。オパールは1.47以下、カルセドニーは1.53程度で
すから、もし屈折計が手元にあれば簡単に識別可能です。
屈折計が無い場合には、注意深い観察によって識別のヒントを得ることが出来る場合
もあります。具体的には割れ口(欠けた部分)表面の状態の観察するのです。研磨石
の場合には割れ口が無い場合もあるでしょうが、それでも例えばビーズの場合、糸孔
周辺に小さな欠けが多々あるものです。その断面に着目します。
カルセドニー(メノウの種名)の場合には割れ口表面がガラス瓶の割れ口の様に滑らか
ではなく、とても小さな、ほぼ同じような大きさの凹凸があります。 この様子は[フラクチャー
(割れ口)から得る宝石鑑別上のヒント]というページで紹介しています。 一方
オパールの場合の割れ口はガラス瓶の割れ口に様に滑らかであるか、凹凸が有ったと
しても不規則になります。
なぜこのような違いがあるのか? それは、これらの宝石の構造の違いが原因です。
カルセドニーは小さなクォーツの粒が集まって構成された宝石です。この粒の大きさ
は裸眼で容易に見える程大きな物ではありませんが、それでもオパールを構成する粒
が電子顕微鏡ではじめて確認できる程度の小ささであるのと比べると、随分と大きな
物です。そして割れた場合にはその結合力の弱さゆえに粒と粒との境界で割れるため
に、割れ口の断面からは小さな凹凸が観察されることとなるのです。
一方オパールも無数のシリカ球から構成されますが、先に述べたようにその粒は電子
顕微鏡レベルの小ささであり、割れ口の状態に影響を与えるものではありません。
よって割れ口断面はガラスのように滑らかに見えるか、凹凸が有った場合でも不規則
な凹凸を示すこととなります。
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3. ジュエリーニュース - GIA JAPAN宝石図書が1〜7割引のブックフェア開催 - ∽∽
ジュエリースクールのGIA JAPAN(ジーアイエージャパン)の東京校は恒例となった
ブックフェアを今年も開催する。この催しは宝石関連書籍やGIAグッズ(※)を
1〜7割引で販売するもの。開催地は同校東京校で開催日は以下の通り。
2006年4月20日(木)11:00〜19:00
2006年4月21日(金)10:00〜16:30
http://www.giajpn.gr.jp/topics/bookfair2006.shtml
※GIAグッズ:今回のフェア対象商品かは不明だが、GIAでは同校のロゴ入り
Tシャツ、トレーナー、マグカップ、電卓なども作っている。
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4. ジュエリーニュース - 真珠科学研究所第19期アカデミーコース受講生募集開始∽
真珠科学研究所が第19期のアカデミーコースの受講生の募集を開始した。このコー
スでは6月から1年間、週二回、東京にある同研究所のセミナールームで学ぶもので
修了者には「パースマスター」の称号が授与される。開講より20年近くの歴史があ
り、述べ100余人が受講している。
アカデミーコースのパンフレット
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5. ジュエリー ニュース - ビルマ産と提示されるルビーが産地偽装の例が急増 ∽∽
グベリンジェムラボの報告によると、最近バンコクやミャンマーのヤンゴンでビルマ
(ミャンマー)産として提示されるルビーが、実はタジキスタン産のルビーと思われ
る例が急増している。
最近同研究所に最近持ち込まれた5〜10キャラットの複数のルビーはミャンマーの
新しい鉱山で産出された石とされたが、分析の結果モゴクやモンスーなど同国の既知
の鉱山産ルビーの特徴ではなく、タジキスタンのパミール産の特徴を備えているとい
う。
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※敬称を省略しました。
宝石に関するご質問や弊紙に対するご希望などをお寄せ下さい。
http://www.yk.rim.or.jp/~ofukumot/otayori.html
※画像をお送り頂いても宝石鑑別はできませんのでご遠慮下さい。
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