GIA,AGTA,新しいコランダムの熱処理（その後、ベリリウム拡散処理、あるいはバルク ディフージョン処理と呼ばれるに至る）に対する鑑別書上の表記を変更
新しいコランダムの処理に関し、ＧＩＡ並びにＡＧＴＡは、鑑別書の表記を変更すると発表した。この方針の変更は既に発効している。
これは、概要を鑑別書に反映させる程度にはこの処理を解明したと判断した事を受けての事。
当該処理は、バルク ディフュージョン（bulk diffusion; バルクは「大量」といった意味がある）と名付けられ、その処理方法によって２種類のカテゴリが作られた。鑑別書上の表記は、後述のいずれかとなる（GIA Gem Trade Laboratory（現在のGIA Laboratory）とAGTA Gem Testing Centerの場合。表現の細部はそれぞれ異なる可能性がある）。
１）バルク ディフュージョンによる場合（後述の[２]以外）
- Group/Species
natural corundum
- Variety
sapphire/ruby
- Treatment comments
indications of heating and of surface-related color created by bulk diffusion
- グループ/種名
天然コランダム
- 変種名
サファイア/ルビー※
- トリートメントコメント
熱処理、及びバルクディフュージョンによって作られた表面に沿った色の痕跡を認む。
２）検査石からオーバーグロースされた合成素材が検出された場合。
- Group/Species
- natural corundum
- Variety
sapphire/ruby
- Treatment comments
indications of heating and of surface-related color created by bulk diffusion; areas of synthetic overgrowth are present
- グループ/種名
天然コランダム
- 変種名
サファイア/ルビー※
- トリートメントコメント
熱処理、及びバルクディフュージョンによって作られた表面に沿った色の痕跡を認む。合成素材によるオーバーグロースの痕跡を認む。
※ sapphire/ruby
この表記は、石の色によってサファイア、あるいはルビーのいずれかの表記をするものと読めるが、例えばルビーと云える色であったとしても、処理による色である以上元々の色が分からず、それを「ルビー」と表現するのであれば、少々妥当性に欠く判断に思える。従来の熱処理の場合には（処理に関する伝統的な考え方や、また、ほとんどのルビーが熱処理を経ている現実を踏まえて）問題なかろうが、今回の処理は日本流には「エンハンスメント」ではなく「トリートメント」というべき処理のようだ。それならば、従来ルビー色に処理されていた拡散処理石を拡散ルビーとは呼ばず、レッド拡散処理コランダムとしていた方針との整合性もとれない。特に[２]のように、合成素材が検出された場合には、なおさら「ルビー」との表記では問題があると思うのだが。
■ オーバーグロース
注目すべきは、[２]のように、合成素材をオーバーグロースさせたタイプも有る点。オーバーグロースとはファセット加工を施した天然石の周りに薄い合成結晶薄膜を成長されるもので、ジェモロジストには合成エメラルドへのオーバーグロースが広く知られている。またそれとは製法は異なるものの、ＣＺへの合成ダイアモンドの蒸着といった報告例もある。しかし、従来薄膜の域をでる厚さのオーバーグロースは報告されていない。
今回の相対的に深い着色領域を持つ処理のどの程度にオーバーグロースが行われているかなどは定かではない。
■ ディフュージョン
従来ディフュージョン処理（拡散処理）と云えば、拡散領域（人為的に色が施された領域）が0.5mm程度であったが、今回の新しい処理ではその常識を遙かに上回る拡散領域をもつ拡散処理が登場した事を意味する。ただ、技術的には、従来の拡散処理とは全く異なっているようだ。
日本のラボ（鑑別機関）の主流は、この処理を日本流に云うところのエンハンスメントと分類してきたが、[２]のように、合成素材も検出された場合、エンハンスメントとするのは無理があるのではない。今後の動きを注視したい。
-
Pasted: 2002/06/11
関連記事
-
>> ジュエリー ニュース トップ
