[注記]
- この指針を作成するに当っては「ニッケルに関するヨーロッパ指令」(後述)を参考にした。
- この指針は日本国内において適用される。ニッケルに関するヨーロッパ指令(後述)を批准し実施している国に対して輸出するジュエリー、アクセサリーはヨーロッパ指令に定める基準に合格したものでないと認められない。
ジュエリーの製造・販売に携わるものは、ニッケルなどの金属アレルギー原因金属について、正しい情報を消費者に提供することに努めて下さい。
またJJAが製造物責任法にかかわって発行した通知書(平成7年4月)にもとづいた、「注意表示シール」の利用や、顧客への書類による通知、PL保険の活用等を図って下さい。
[ニッケルの使用合金の現状および問題点]
(1)ニッケルアレルギーに関する誤解
ニッケルが原因によるニッケルアレルギーを防止するために、ニッケルを含む合金の使用時は注意が必要である。
製造物責任法にかかるJJAの解説の、「貴金属装飾品の肌に触れる部分に、ニッケルを合金として含む貴金属合金を用いないこと、ニッケルめっきを行わないことが望ましい。」と発表したが、詳細な説明が不足したために業界に誤解や過剰反応を生じさせた。
解説 本来の意味は下記のとうりである。
1.この解説はニッケルに関するヨーロッパ指令を参考にした。
2.「肌に触れる部分」とはピアスイヤリングのように長時間、直接肌にふれるものをいう。
3.「ニッケルめっきを行わない」とは、ピアスイヤリングにはニッケルめっきを行わないことの意である。
(2)「ニッケルに関するヨーロッパ指令」(後述)
「ニッケルに関するヨーロッパ指令」では、ピアスポストアッセンブリー以外で直接肌に触れる部分の製品のニッケル含有貴金属の使用については、ニッケルイオンの放出量が一定の基準以下であれば、その使用を認めている。
(3)ヨーロッパ製ニッケル含有ホワイトゴールド製品
ヨーロッパでは、「ニッケルに関するヨーロッパ指令」を批准し実施している国が多く、ヨーロッパ国内では基準に応じた貴金属製品が製造販売され、同時に輸出されている。
ヨーロッパ指令は、ピアスアッセンブリーにニッケルを含有する金属の使用を禁止しているが、それはピアッシング後の上皮化までであって、上皮化以後のピアスアッセンブリーは対象ではない。
また、その他の用途については、合金のニッケル含有率ではなく、合金のニッケル溶出量を規制の基準としている。
従って、基準にあうニッケル入り貴金属素材は多く用いられ、そのホワイトゴールド製品が日本に輸入されている。
技術部会では市場において購入したイタリー製、フランス製のホワイトゴールド製品の成分分析を行なった結果、多くの製品にニッケルが5〜7%含有されていることを確認した。
同時に、これらの輸入製品の販売現場においては、製品素材にニッケルが含まれているという表示は一切ない。
また、ニッケル溶出率の検査をヨーロッパ指令が示す検査方法に沿って行なったところ、この製品から規制値の10分の1の溶出率の結果を得た。
これらのことから、ニッケルを7%程度含む金合金は、ヨーロッパ指令の規制値を十分クリアしていると想定される。ただし、成分がヨーロッパの素材と同等である条件を伴う。
(4)国内メーカーの対応
国内メーカーは「ニッケルの使用は望ましくない」とのJJAの解説に過剰反応し、ニッケルの使用を禁止する、ないしはニッケルの使用を避けることがベストであるとの解釈をし、多くのメーカーはニッケルを含有しないホワイトゴールド製品を製造している。
このJJAの解説については、当時の担当者も誤解を生じさせたと反省している。
その結果、国内メーカーは価格的、品質的、色調において不利な条件で輸入品との比較競争を強いられ、消費者を含めた市場においても不利益を被っている。また一部には、パラジウム割りホワイトゴールドのコストの高騰に耐えられず、明らかに黄色の金合金をめっきにより表面を白色とし、ホワイトゴールドと称した製品が出回わり、消費者問題になりつつある。
(5)国内の他業界の動向
他の業界ではニッケルを含む合金は依然として一般的に広く使用されている。ニッケルは白色性、硬度、切削性、バネ性、耐食性などに優れ、ニッケルを含む素材としてはステンレス鋼、ニッケルシルバー(洋銀)、形状記憶合金(超弾性合金)、ニクロム素材、白銅、サンプラなどが生産され、硬貨、食器、調理器具、歯科材料、手術用材、時計、眼鏡、刃物、衣料部品、家具、文具、車両等に広く使用されている。
技術部会ではこれらの業界でのニッケル含有金属の使用実態調査をおこない、多くの業界はニッケルアレルギーを認識しつつも、ニッケルの特性上今後とも使用を継続するとのアンケート結果を得ている。
ただし、輸出が多い時計業界、眼鏡業界では国内でもヨーロッパ指令を採用する傾向にある。