長年ダイヤモンド、それもメレーを中心に仕事をしてきました。ダイヤの1個石に比べるとメレーに対する関心はいまひとつです。メレーはジュエリーをつくる材料として欠かせないものなのですが。メレーのことを「くず石」などと言われると悲しくなってしまいます。メレーってこれでなかなか奥深いのですよ。世界経済の動きにリンクしていたり、科学技術の進歩と密接な関係を持っていたりするのです。またメレーをよく知ることはジュエリーを製作する上でとっても大切です。どういうサイズのメレーを使うか、どういう留め方をするかで完成品の感じは大きく変わってきます。石合わせがきちんと出来ていないと石落ちや石割れの原因になります。どういうメレーが調達可能か、メレーがどういうクラス分けをされていてどういう価格体系になっているかを知らないと有利な材料選びは出来ません。なぜこんなメレーを使った製品企画を立てるのだろう? なぜこんな枠つくりをするのだろう? なぜこんな石留めをするのだろう? と疑問を感じたことが何度もあります。メレーについてもう少し知っていればよりレベルの高いジュエリーがより安くできるのになあ。ということでメレーに関する情報や感じることなどを文章にしてみることにしました。21世紀型の新しいジュエリーづくりに役に立てていただければ嬉しいな、と考えています。
まず、価格の話です。メレーの価格はここ2,3年かなり高くなっています。シンジケートの方針などと解釈してはいけません。デビアス(DTCというべきですね)はとうにメレーの価格コントロールを放棄しています。需要が減少から増加に反転したのです。日本のバブルが崩壊して日本の宝飾市場は3分の1近くまで落ち込んでいるのですから、日本の落ち込みをカバーして余りある市場が誕生した、つまり、インドと中国です。特にインドはIT産業の伸展で宝飾市場は既に日本を上回ったといわれています(インドの宝石はウラの販売が多いので正式な統計がないのですが)。インド国内の販売量が増え、輸出用のメレーが足りなくなって価格が上がった、簡単に言えばそんな状況です。
株式会社サノ・トレーディング
佐野良彦
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執筆者紹介
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佐野良彦
株式会社サノ・トレーディング代表取締役。同社は明治15年(1882年)創業の欧米時計宝石販売佐野商店が発展した老舗ダイアモンド輸入卸。
企業理念には『宝飾文化人を目指す』と掲げる。
各種業界誌への寄稿多数。確かな見識でも知られる。
敬称を略しました。
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