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メレバンク・カフェ(9)- 合成ダイヤモンド・メレー登場

GIAが合成ダイヤモンドのグレーディングを始めることになった、という記事には驚かされました。合成ダイヤモンド販売業者が天然ダイヤモンド業者との公正な競争を確保するために合成ダイヤモンドのグレーディングも実施すべきであるとGIAに申し入れ、拒否すれば訴訟も辞さないと言う姿勢にGIAが折れて、合成ダイヤモンドのグレーディング・レポートを出すことになったそうです。訴訟社会の米国の一面を垣間見るとともに、合成ダイヤモンドが宝飾用として使われ始めたのだな、という感想を持ちました。

しかし、1個石の場合は鑑別すれば、天然か合成かの結果がすぐ出ます。合成ダイヤの鑑定書ができたといっても、合成であることを明記した上でのレポートですから、合成を天然と誤る可能性は殆どありません。問題はメレーです。

従来、合成ダイヤモンドのメレーは費用的に合わないと言われていました。ダイヤはサイズが小さくなるに従って、1個に占める研磨工賃の割合が大きくなりますから、合成ダイヤの原石が天然ダイヤの原石より安いとしても、メレー1個の価格にそれ程反映されないので、サンプル的につくることはあっても大量に作る意味がないというのがその理由でした。

では、価格ではない別のメリットのために合成ダイヤメレーが作られるとしたら……  今回発見された合成ダイヤメレーはイエロー、それもカナリーと一般に呼ばれるファンシービビッド・イエローカラーのメレーです。

複数個で使用されるファンシーカラーのメレーは色合わせが一番のポイントです。色が濃くなればなるほど色相の違いが強調されて目立つからです。放射線処理のメレーは色合いは安定していますが天然の色とは微妙に違っていて、処理石であると容易に判別がつきます。

安定したカナリーカラーのメレーはジュエリー製作の材料としては魅力的な素材だと思います。合成と知って安易に使うだろうか、と考えて、処理ダイヤを処理と表示せず単にブルーダイヤと表示して恥じない業界の現状を見れば、広く出回る危険性があるのではないかと、あえて事実を公開します。セットされたメレーは合成か天然の鑑別は殆ど不能、ルースの状態でも、1/50ct以下のサイズは正しい鑑別結果を出すことのできない可能性がある、というのが鑑別機関の見解です。

株式会社サノ・トレーディング
佐野良彦


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執筆者紹介

佐野良彦

株式会社サノ・トレーディング代表取締役。同社は明治15年(1882年)創業の欧米時計宝石販売佐野商店が発展した老舗ダイアモンド輸入卸。

企業理念には『宝飾文化人を目指す』と掲げる。

各種業界誌への寄稿多数。確かな見識でも知られる。


敬称を略しました。

 
 
メレバンク・カフェ
ジュエリーには欠かすことのできないダイヤモンド メレーに関するコラムです。毎月2〜3回更新中!

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